平素より組合活動にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび、当組合が提訴していた賃金裁判につき、2025年9月11日、東京地方裁判所において判決が言い渡されました。
裁判所は、会社が導入した新賃金体系について、
- 労働者への説明不足
- 労働者の意見集約の欠如
- 労働組合との十分な交渉を経ていない点
を重視し、その導入を無効と判断しました。
これに伴い、旧賃金体系に基づく賃金および各種手当の未払分について、会社に支払いを命じています。
また、組合としては新たに不同意者22名による追加訴訟を8月22日に提起済みです。
さらに、弁護士と協議のうえ、本判決を受けて、新契約の「同意」をされたクルーであっても、適法性や同意取得の方法について訴訟等の法的対応を希望される場合には、対応を検討してまいります。
東京地方裁判所判決の要旨
- 新賃金体系導入の手続的瑕疵
本件は、被告会社が2020年に導入した新賃金体系の有効性が争点となった事案です。
裁判所は、以下の手続的欠陥を認定しました。
- 労働者に対する説明が不十分であったこと
- 各労働者の意見集約を怠ったこと
- 労働組合との十分な交渉を経なかったこと
労働条件の不利益変更については、最高裁判例が示すとおり「高度の必要性」と「内容の合理性」が求められますが、本件導入はいずれの要件も欠き、適法性は認められないと判断されました。
- 不利益の程度
新賃金体系による減額率は最大で約10.83%、平均でも約6.10%に及び、労働者にとって決して軽微なものではありませんでした。
特に、管理職であるCSM(キャビンサービスマネージャー)に対する減額幅が大きいことを裁判所は具体的に指摘しました。
CSM手当は勤務のある月は月額7万5000円を全額支払うべきものであり、新体系に基づく減額は法的根拠を欠く未払と認定されています。
会社は「キャリアパス」という名目で新契約導入を説明していましたが、判決は、実態としてキャリア形成ではなく大幅な賃金引下げが行われていたことを明らかにしました。
- 未払賃金の判断
新賃金体系が無効である以上、会社は旧体系に基づき賃金を支払う義務があります。裁判所は、以下の各手当について未払いを認定しました。
- CSM手当(月額7万5000円)
- コミッション(月額4000円)
- 休業手当(日額1万1000円)
- 時間外手当・深夜手当(旧契約に基づく算定額)
- 年休・病休手当(日額1万6000円)
- 永年勤続休暇等(日額1万6000円)
これらについて、被告会社は原告らに支払う義務があると判示しました。
- 根底にある問題
今回の判決は、単なる賃金計算上の争いにとどまりません。
裁判所は、手続的瑕疵として「説明不足」「意見聴取の欠如」「組合との交渉不足」を認定しました。
これは、労働条件の変更は「対話と合意」を前提にすべきであるにもかかわらず、その基本を欠いた経営判断が司法の場で否定されたことを意味します。
また、この背景には、キャビンクルーという安全要員をコスト削減の対象とし、労働組合との協議を軽視する経営姿勢があると、私たちは考えます。
- 判決の意義
本判決は、労使関係の基本原則を改めて確認するものです。
- 労働者への誠実な説明責任
- 労働組合との真摯な交渉義務
- キャビンクルーを含む労働者の権利と生活基盤の尊重
これらを欠いた一方的な制度導入は認められないことを、司法が明確に示しました。
さらに、同意取得の方法や、客室マネジメントによる有形無形の圧力についても、今後厳しく問題視されるべきものです。
本件訴訟は、単なる賃金の問題にとどまらず、労働者の権利、公正な職場文化、そして航空の安全文化を守るための重要な闘いでした。
自身の評価や昇格よりも原告として声を上げ、キャビンクルーの権利と公正な文化の重要性を訴え続けた原告の勇気に、心から敬意を表します。
また、日頃よりご支援くださっている皆さまに厚く御礼申し上げます。特に、訴訟活動を支えるうえで大きな力となったご寄付につきましては、その一つひとつが私たちの原動力となりました。改めて、全国からお寄せいただいた温かいご支援に心より感謝いたします。
本判決が、労働者の権利保護と航空の安全文化の確立に向けた一助となることを願っております。

関連報道リンク
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD114NU0R10C25A9000000/
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250911/k10014920081000.html
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20250911/k00/00m/040/272000c
朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/AST9C2VCZT9CUTIL025M.html
フジテレビ(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/930424
しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-09-12/2025091200_04_0.html
弁護士JPニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ec310602b37ce7dfd0d5c980b911336bd36df0a?page=2